ウクライナ情勢から国外避難について考える。
現在進行している事態だが、ネットでは随時ウクライナからの国外避難民数が報道される。現在3月23日で報道によると総計360万人超となっている。
ウクライナ戦争が始まってから大体28日、360万人全てがその間の避難ではないが単純に割ると1日約13万人となる。ウクライナは陸路でポーランド、スロバギア、ハンガリー、ルーマニア、モルドバと繋がっているので、旅客機は危険で飛行できないし、その殆どは陸上を移動して国外避難したと仮定する。つまり、陸路で国外避難脱出は、国境線の長さとか隣接する国との関係の良さ・悪さによるが、比較的友好であっても1日13万人程度だと言う事だ。そして報道によると、避難先ですでに許容能力の問題も起きている。
これを日本に当てはめてみると、もしほぼ全国民が避難するとして、陸路は無いが仮に陸路があったとしても、大体1000日かかるという事だ。2年以上だ。そして、日本には「陸路」は無いわけだから、「海路」か「空路」という事になって、それらは当然陸よりは避難効率は悪いので、もっとかかってしまう。
「海路」では実際どの程度なのか、船舶数や船籍や輸送能力などは専門家でないのでわからないが、1つの例として、「日本籍の外航商船」で乱暴に考えると、その総トン数は2019年で3200万㌧だそうだから、そのどれくらいが人間を運べるか分からないが、概算で10分の1が使用できて、320万㌧として、総トン数の10分の1の重さの人数を運べるとすると、32万㌧、1人平均50㌕とすると1㌧で20人だから、この仮定だと1輸送サイクルで運べるのは640万人という事になる。
だが、一気に輸送船が沿岸に横付けできるわけではない。港湾施設能力では日本の2020年のコンテナ取扱貨物量は約2100万TEU(Twenty-foot Equivalent Units、20フィート相当のコンテナ1つを単位としたコンテナ個数の単位)、1日辺りで5万TEUとして1TEUで1㌧の人を運べるとすると5.7万人、28日間だと約161万人となる。1億人の日本人・日本滞在の外国人が国外避難の必要があるとして、最初の1月で精々国外に出られるのは0.015%という概算になる。ごく限られた人達だけになる。取扱貨物量が港湾をフルに使ってその2倍としても、精々が320万人だ。
仮定や概算が大変多いが、ウクライナの陸上経由の避難民よりは少ない筈だから、そんなに間違っていないだろう。平たく行って殆どの人は逃げたくても即国外という訳にはいかない。なぜなら、国外に逃げたい人全員を避難させるのに何年もかかる。この他にも、港湾施設に行くまでの移動でも許容量の問題がある。鉄道は混乱、道路は渋滞、ウクライナ戦争で報道された状況と同じ事が起きる。
健康状態が悪い人も考慮すると、輸送能力の見積もりももっと厳しいかもしれない。また、肝心の輸送先が無いかもしれない。仮に1千万人としても、どこが受け入れられるだろうか。輸送船がいつかの感染症客船の様に海を彷徨う事になってしまう。とにかく海外に早期避難は難しい。
もし、上記推計が概ね合っているとして、それが何を意味するかというと、「俺は戦争はとにかくイヤだから、もし戦争になっても、戦争状態でないところ(海外の平和な国)に一時的に逃げる」という考えは、その是非は別として、非現実的だということだ。戦闘地域から逃げ出すにしても、当座は国内に留まって、その移動可能範囲内を逃げるしかなくなる。でも戦争状態だから、より安全な地域を目指すと言ってもなかなか難しい。結局、多くの人は家や地域に留まって、籠もらざるをえない。殺し合いはしないというのは各自の自由にしても、殺し合いが無い場所まで逃げるというのは海に囲まれた日本では、ほぼ幻想だ。
もし事前に機器を察知できればの話だが、まだ旅客機等が普通に飛んでいる間に、何ヶ月も前から避難しておくくらいが精々だ。どうだろうか。