MLB労使交渉:1994年のストライキのその後の交渉

2021-12-01 投稿

MLB

MLBとMLBPAの労使交渉について考える。


一凡人 求職中の素人視点なので、真に受けずに疑って読んでくれ。


唐突だが、2016年11月30日に合意した、CBT(Collective Bargaining Agreement、以下「労使協定」と略)が2021年12月1日で期限切れを迎え、その後は、新たな労使協定が必要となる。もうすぐだ。

協定が合意に至らないと、球団と選手の間の様々な決まり事、ルールがないわけだから、MLBの試合興行は出来ないし、フリーエージェント選手と球団の交渉も出来ないし、年が明けて開幕が近づいてきても、スプリングトレーニングさえも出来なくなる。

シーズン中にこのような状況になると、試合が出来ないため、選手側からの「ストライキ」となる。現在はシーズンが終了しているため、もし2日以降合意がなければ、球団としての選手サポートなどの活動や、施設などの使用を禁じる「ロックアウト」となる。このまま開幕までに合意できないと、「ストライキ」状態にもなる。

何を争っているかというと、当然お金だ。MLBPA(Major League Baseball Players Association、MLB選手会)側から見れば、利益の配分が選手により多くなるような条件に少しでも近づけたい。MLB(球団オーナーや球団経営会社)からみれば、利益を最大化できるような条件に少しでもしたい。片方の利益はもう片方の不利益に成りやすいため、交渉が難航するわけだ。しかし当然の事ながら、試合が開催興行できなければTV放映権やチケット売上等が無くなるので、双方にとって収入減となる。従って、労使交渉の宿命だが、ある程度の我慢比べ、根比べ、耐久力比べの様相を呈してくる。

前回これに似た状況になったのは、1994年の労使交渉の決裂によるストライキだ。1993年末でそれまでの協定は失効し新協定の合意に至らず、翌1994年シーズンは暫定的に開始されたが交渉はそれでも進まず、夏になって選手会は合意を目指す圧力をかけるため、ストライキを決行した。結果、その後のシーズンの残りはワールドシリーズも含めて開催されず、1995年4月まで協定合意は成らなかった。

新協約交渉でもめたのは、MLB経営者側が提案した「サラリーキャップ制度」だった。Wikipediaによると、「チームが選手に支払う収益に占める年俸総額の割合を現行の58%から50%に、また1球団当たりの選手の年俸を28球団の平均額の84%から110%の範囲に抑えるプラン」であった。また、年俸調停の廃止も提案された。選手会側は、自分たちにとって利益の配分は低下するとみなし、提案を拒否したが、経営側も譲歩せず、労使が激しく対立した。

その後1995年4月末から新シーズンが開幕したが、これも「旧労働協約下」での試合興行であり、暫定的だった。その背後関係はハッキリ分からないが、選手会も経営側が代替選手での開幕を目指したり、政治からの合意圧力もあったり、何よりファンの失望が長引く事を恐れていたからと考えられる。とにかく遅ればせながらも一応開幕し、同時に新協約の交渉を行った。今回も開幕が迫っても合意できそうでなければ、これに近くなる可能性もある。

その後結局サラリーキャップ制に代えて「Luxury Tax(贅沢税)」を導入するなどして新協約が締結された。サラリーキャップ導入を阻止したので、どちらかといえばMLB選手会の方の意見が通ったように見える。強硬と言われていた経営者側がなぜこうなったのか俺もよくわからないが、どうも経営側が一枚岩でなかったようで、それが原因だったのかもしれない。つまり、そのままの状態よりは要求を受け入れてでも試合をした方が良いという判断が合理的になったのかも知れない。つまり根比べで経営者側にほつれがあったということだ。今回もこうなる可能性もあるだろう。

ではMLB選手会側が譲歩するのはどうか?前回の結果からも、ネットで伝え聞く選手の意見を見ても、選手の方は少なくともそれなりに一枚岩を維持しているようだ。ロックアウト、ストライキ中でも選手の生活をサポートする資金においても、MLB選手会は潤沢であると言われている。経営者側が前回と反対に長期間強硬姿勢で固まっているのでなければ、選手会が折れる(経営者側の主張を概ね受け入れる)というのはあまりないと思う。どうだろうか。

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