米国議会議事堂襲撃事件について考える。
今更だが、昨日1月6日は、米国議会襲撃事件があってからちょうど1年後になる。
アクション映画やサスペンス物語などでは、警戒が厳重なはずのワシントンD.C. 周辺で騒乱が起きるのは定番である(つまり、実際にはそのような事が起きる確率は非常に低いはずだった)が、実際に似たような事件が起きて、あろうことか議会の中に暴徒が侵入してしまった。文字通りの前代未聞だ。
日本で言えば、総選挙の後、首班指名の日の朝、選挙結果を受け入れられない運動機運が高まって、日比谷公園とか皇居外苑あたりに集まって気勢を上げてから、内堀通りを練り歩いて国会に正面から突入していって、一部は議員宿舎にも入って行って各議員の事務所で狼藉を働いたり暴れまわったりし、一部は議員が避難したあとの議事堂で議長席に座ったりしてふざけるようなモノだ。
もしそんな事が起きたら、警視庁はどうやって止めるだろうか。それ程まとまりのない行進を平和裏に止めて、進入を阻止するのは、なかなか骨が折れると思う。でも突破されたら威信に関わるから昨年の事件を受けてなにか考えているだろうか。だが暴徒になる前?のデモ行進みたいなものを穏健な実力行為で阻止するには、人海戦術で隙間無く警官の壁で進行を阻止するくらいしかない。しかし報道によると、米国の州兵の司令は出動要請が来ても、州兵隊がグルっと議会を取り囲む状態が好ましくないとして、直ぐには応じなかったらしい。いかにもアメリカらしい。
日本とアメリカで、諸処の事情は大きく違う(例えば、米国では選挙結果から議会での認定まで長い時間がかかるが日本では長くて数日、また米国の暴徒の一部は銃で武装していたが、日本では銃は所持していない)が、映画などを観て「いやいや実際こんなことは起きえない、警戒も厳重だし」と「思い込む」のは危険だと証明された。軍事施設を除いて、連邦議会といえば国の中枢で警備も固いはずなのに、いとも簡単に、それも大規模に侵入されたのだ。しかも何日も前からどうやら暴徒が出るかもしれないと予想されていたにも関わらずだ。警備の中にも同調的な人員がいた事もあるかもしれないが、それにしても想定外だ。
この事件で1つわかったのは、米国の州兵や警察と言えども、やはり同朋というか同じアメリカ人の集団に対しては、あの様な危険な状況であっても、また連邦議会前とか議会内とか、特殊な場所であっても、組織的に敵対するのは躊躇われるという事だ(散発的には警官から発砲があり、デモ参加者にも警察側にも死者が出ている)。単独とか数人だったらテロリストかもしれないので躊躇なく阻止、強制除外するだろうが、数百人となると発砲したりすれば大惨事となるから、やはり本格軍事力の実力行使はできなかった。武装集団でもそうだったのだから、デモ参加者が丸腰である日本も同様であろう。
また、もう1つ判明したのは、現職の米国大統領といえども、SNS大手にアカウントを凍結されたり削除されたりすると言う事だ。実際に、ツイッターやFacebookがそのような行動を決断した。それ自体の是非も、言論の自由も含めて議論になっているが、とにかく大統領の情報発信にさえも影響を与える程の力を各社は持っていることになる。考えようだが、大統領の強権にも負けない民間勢力とも言えるかもしれないし、場合によっては大統領の権限を部分的間接的に制限するのが選挙の洗礼を受けていない民間企業なのはどうなのかとか、どちらにも受け取れる。襲撃自体の大混乱と被害も深刻だが、それとともにインターネット時代特有の新たな難しい論点を残した。