LAエンゼルスとMLBの薬物問題について考える。
現在、MLBは労使交渉がもつれて、ついに、少なくとも開幕2カードは開催されないことになってしまった。それについて報道が加熱してきている最中だが、少し前の話で、MLBで大問題となっている証言があったので、本日はそれを題材とする。
その証言とは、元エンゼルスで現在フリーエージェントの「マット・ハービー」投手による、「タイラー・スギャックス」投手の死亡事故(2019年7月、スギャックス投手は薬物接種からの吐瀉物による窒息で死亡した)に関連した、チームの広報部長による薬物提供の責任を争う裁判でのものだ。内容が非常に衝撃的だった。
報道されているので簡単に説明すると、ハービー投手も元エンゼルス広報部長から薬物を入手していた。そして、ハービー投手はその広報部長以外からも薬物を入手しており、スギャックス投手にそれを提供していた。また、ハービー投手は以前からコカインを使用していた。
衝撃の1つはコカイン使用自供だが、コカイン使用の時点でハービー投手の復活は可能性が低くなってしまった。なぜなら過去、そのような状態から現役中に這い上がってきた選手は殆どいない。引退後にハマってしまう選手はいるようだが…メッツにいる時は、ものすごい投球をして将来を嘱望されていたのに…
とにかく、アスリートと所属チームの深刻な薬物汚染事件だ。
スギャックス投手の接種した薬物は、報道によると処方箋で入手できる「オピオイド系」の強い鎮痛剤であったらしい。オピオイドとは報道によると、要は麻薬(のような働きをする物質)の一種であり、普通は医師の指導の元、強い痛みの対処に使用される。依存性のある恐ろしいモノだが、医者とともに厳しく管理すれば「使い様」というわけだ。ちなみに、ミュージシャンのプリンスもこの種の薬物の中毒死であったとされる。
医者から「痛みのため」に処方される事もあるから、「違法薬物」という事にはならないようだが、MLBでは薬物検査の対象となっている。つまり検査に引っ掛からなかった。これも大問題となっている。検査の精度自体と、この程度の検査ということは他にも漏れが多くあるのではないかという疑問だ。
今後、裁判である程度の是非もはっきりするかもしれないし、MLBもこれ以上薬禍が広がるとただでさえ労使問題でひんしゅくを買っているのにこの問題がこじれると非難の原因がまた増えてしまうから、何らかの対処はするだろう。もちろんそれで問題が解決する保証はない。
スギャックス投手の母親の、彼は2014年の「肘の手術」の前に「オピオイド依存症」であり、それをその後に克服した、という証言もあった。薬物使用が手術の原因となった症状の痛みに耐えるためであるのか、手術への精神的圧力のためなのか、または手術に全く関係なくその他の何らかの理由で薬物を使用していたのかはわからない。米国では近年、処方箋経由であっても「オピオイド系薬物」の蔓延状態にあり、それによる中毒死が社会問題になっている。多くの人が「痛み」に悩んでいるという事になる。件の投手も痛み止めとして、その広報部長から薬物をもらったらしい。
エンゼルスというのはディズニーの影響か、個人的な意見かも知れないが、クリーンなイメージだったはずだが、一連の問題により、そのような「見せかけの印象」は崩壊した。スギャックス投手の親族は、球団自体もある程度は問題を把握していたはずだとして、エンゼルスの組織相手にも裁判にこれからなるらしい。賠償になれば巨額の支払い、それより影響が大きいのはより悪化する球団の印象、エンゼルス存続の危機にもなりかねない。大谷のキャリアーにも影響するかもしれない。どうだろうか。