予想もしなかった、債権投資の危険性について考える。
唐突だが、君はどこかの国の国債を所有していていたり、国債を資産に組み込んでいる基金等に、間接的に国債投資したりしているだろうか。
日本人ならば、円建ての日本国債、あるいは先進国、特にドル建ての米国国債等は発行額も多くて、それなりに信用と実績があり、直接取引も多いかもしれない。円建て日本国債(10年)だと、現在利率は大体0.1%、ドル建ての米国債だと利率年1.8%ほどだ。米国債はまだいいとしても、日本国債の利率は非常に低い。投資の妙味は殆ど無い。
ここで机上の計算であるが、次のような場合を考えてみる。
上記のように、日本は低金利が定着し、今後の見通しは分からないがしばらくこのままと予想するとする。つまり金利で資産成長は短中期的には大変難解という期待だ。実際日本はここ何十年もそんな感じで、現在もそれが持続している。
そして一方、国土も大きく、人口増加しており、しかも若年層や生産年齢人口の割合が今後暫く上がり、従ってこれからGDP成長が期待できる架空の国、Xを考える。X国としては、自国通貨で国債発行して通貨の危険度を低めつつ、高めの利払いを覚悟してでも巨額の資金を集めたい。しかし、通貨の性質上、それが叶わない。という事で、国際通貨である、ドルや、日本国民向けであれば、円建ての国債発行を考える。
日本人の投資家で、特に海外に興味がなくて全て円で済ませるような資産家は、円建てだから安心感があるかもしれない。しかも、日本国発行の国債の利率に比べて、投資家に売り込むため非常に高率を設定する。有り得るだろう。架空の話だが、今、どこかの発展中の国が年利率5%円建て国債を発行したら、そんな事が可能かどうかは別として、人気出るんじゃないだろうか。
しかし、しつこいがまたここから架空の話として、それまで順調に利払いして来たその国が、政情不安かなんかとにかく予測できない事態が起こりで、「オーケー、次の利払いは悪いけど円じゃなくて、俺たちの国、X国の自国通貨で払わせてくれ」と言ってきたとする。
為替レートにもよるが、投資家は大混乱に陥るだろう。円建てで俺は円で生活しているから、為替の危険性は避けていたはずなのに、なんでこんな事になってしまうんだと…みんなそう考えるから、その国債は売られて、暴落して、その債権投資自体が大失敗となってしまう。
このような事が許されていたら、投資家は怖くて債権を買わなくなってしまう。借金返済のルールをお互いに最初に納得して取引を開始したのに、一方的な理由でその規則を変えられてしまったら、お金を貸す合理性がなくなってしまう。
既知の通り、ロシア連邦のドル建て国債の利払い日が2022年3月16日に控えており、報道によると額は大したことは無いのだが、ロシアがドルの代わりにルーブルで利払いをするのではないかと皆、疑心暗鬼になっている。このような対抗策を誰が戦前の時点で予想したか。ほとんど誰もいない。利払いがどうなるか現時点では分からないが、もしドル以外で支払われたら、上記のような架空の恐ろしい話が、実話になってしまうかもしれないのだ。加えて猶予期間があるとは言え、基本デフォルト扱いとなってしまうらしい。
相場というのは逆張りする人が大体出てくるから、これも報道によると、投資家の一部でロシア関係の債権を安値だからと買う人達も西側にいるようだ。究極のハイリスク・ハイリターン、賭けのような債権投資だ。しかしウクライナ戦争が始まる直前までは概ね平穏だったわけだから、そこから数週間しかたっていないし、戦が短期間で終わると踏んでいると言うことだ。どうなるかは誰にもわからないから、そちらに乗る人もいるということだ。
しかしそういう人達は有事が起こって色々あってから賭けるのであって、元々債権を持っていた人は、もし本当に利払いが決まりと違う方法ならば、大変な損害だ。とにかく、こういう信じられないような事も起きるのが、投資の世界だと俺も勉強になった。どうだろうか。