日本のウクライナ関連番組で、妙な発言を偉そうに主張する出演者について考える。
連日ウクライナ情勢を巡って日本でも世界でも報道が続いている。
あまり日本のニュースやウクライナ情勢関連番組は観ないが、ネットの日本語ニュースを眺めていると、俺の気のせいかもしれないが、日本語を話せるウクライナの人と、日本の情報番組のいわゆるご意見番的な人たちが、議論しているのがよく出てくる。大体、ウクライナの人達に対して、命が大切だから無駄な抵抗はしないほうが良いと主張する構図となっている。
一方、ネットで米国のニュース番組も視聴できるが、ウクライナ情勢の報道ではそのような「趣旨」の構成は全く見ない。共和党寄りのFOX、逆のCNN(面倒なので他は観ていない)、それぞれに現役・引退した軍関係者、学者、政府関係者、現地の人々、様々な人が出演しているが、「勝てるはずがないから、無駄な抵抗はやめた方が良い」などという意見は聞いたことがない。つまり「自分の国を守るために戦うのは当然」という情勢の分析は双方の放送局ともあまり変わらず、唯一の違いはFOXの方が現大統領の関連した失政弱腰批判がとても強いことくらいだ。
抵抗しないほうが良いのか、自分の国は自分たちで守り抜くのは当然なのか、この是非は分からない。日本でも色々な意見があるだろうし、米国でも日本の意見のような「降参して無抵抗」重視の人も全く居ないということは無いだろうし、また米国はNATO加盟国で、しかも前線近くに戦力を配備している上に、ポーランドからのミグ戦闘機の運搬提供や飛行禁止区域設定をもし実施するならその当事者であるから、意見の違いがあって当然だが、対ロシアで一体となって経済制裁をしているはずの同じ「西側の国々」でも、内部ではこのような温度差があるということだ。
ところで、日本の意見の中には、俺のネット記事の読み間違いでなければ、上記のように「ロシアに勝てるはずが無いから、抵抗して、もし命を落とす様な事になったら無駄死になってしまうので、降参したほうが良い」という意見が結構ある。というか、繰り返すが、視聴率が取れる内容なのか、そう主張する日本人に日本語を話すウクライナの人が呆れて反論するという構図が多く感じる。
繰り返すが、総合的に見た是非は俺には分からない。しかし、この日本人の言い分は間違えている。なぜなら論理破綻していると思う。
どう論理破綻しているかというと、これが正しいとすると、「勝てない相手であるから」、つまり「敗北の可能性が高いから」、言い換えると「抵抗したとしても結局負けてしまうから、それだったら最初から抵抗しない方が得だ」という理屈だが、そうなると、仮に「勝てる相手」であるならば、無駄死にはならないという事だ。しかし「勝てる相手のときだけ、参戦する」等というのは、ほぼ不可能だと思う。だとすれば論理破綻している。
何をもって「勝ち」とするか、そこで既に難解だが、それはいいとしても、「勝てる相手」「勝てない相手」という「事前概念」が既に「空想の産物」だ。なぜなら、「勝てる」相手であるか、参戦前にはわからない。今回のような戦力差があったとしても、戦況は混沌としていて見通しは付かない。ましてや、「勝てると思う相手」とは実情は「それほど実力差が無い(だからこそ勝つチャンスもある)」場合もあるから、そのような国や地域同士であれば、戦力が拮抗して勝ち負けの予想は余計に難しい。
戦前に「よし、勝てそうな相手だから命をかける意義があるな、無駄死ににはならないな」と考えて参戦しても、負けるかもしれない。もしそれで死んでいたら結局この論法だと無駄死になってしまう。つまり「勝てそう」「負けそう」という条件がほとんど無意味だ。「勝てそうな時は無駄死ににならないから抵抗して死んでも無駄死にならない」と言っても、結局その理屈だとその後負けたら無駄死になるわけだから、「勝てそうだから参戦しよう」というのは合理的ではないことになる。つまり論理破綻している。
という事で、「無駄死しないときだけ抵抗しよう」などという寝言は、日本のテレビで空論だけで偉そうにしている出演者の心の中だけの信念としてほしい。どうだろうか。