「ジョブ型雇用」について考える。
今更だが、「ジョブ型雇用」というのがよくネットでも取り沙汰されている。数年前から、単語として急に検索されるようになった。次々に大手企業、有名企業等が「ジョブ型雇用を開始する」みたいな報道が現在も結構多い。
「ジョブ型」と急に?言われても俺は今でもよくわからないが、調べた限りでは、どうも「職務記述書」で職務をハッキリと労使双方で決めておいて労働契約を結ぶ事らしい。間違っていたら申し訳ない。
「ジョブ(job)」というのは「仕事、職務」という意味だから、「ジョブ型雇用」というのは直訳すると「仕事型雇用」「職務型雇用」となる。あまり日本の労働に詳しくなければ、乃至日本で働いた経験があっても雇用契約に詳しい人でなければ、これを聞いて「では今までは何だったのか?」と不思議に思う。
そしてもっと混乱するのが、「ジョブ型」は新しい形態であり、今までは「メンバーシップ型」だったという。「メンバーシップ」とは「会員(資格)」という意味だから、これらを基にすると、「ジョブ型」で会社でやる活動?と、「メンバーシップ型」で会社でやる活動、2種類あることになる。俺も以前は非正規、正規、両方で日本で雇用されたが、「正規」は「雇用型」区別は無かったので、必然俺はその会社の「メンバーシップ」を持っており、やっていたことは「メンバーシップ型」活動という事になる。「職務記述書」は、少なくとも詳細なものは、確かに無かった。
会社でやることは一応「仕事」であるとすると、「ジョブ型仕事」と「メンバーシップ型仕事」という2つがある事になる。同じ仕事をやっているにしても、雇用形態、やっている人により区別できる。奇妙だ。
でも「ジョブ型仕事」とはなんだろうか。上記の通り「ジョブ」とは「仕事」であるから、「ジョブ型仕事」とは「仕事型仕事」という理屈になる。「整数型整数(あるいは”整数型int”)」とか「自動車型自動車」とか、最近だと「サブスク型ビジネス」という言葉があるが、「サブスク型サブスク」だ。訳が分からない。でも「ジョブ型(雇用)の仕事」、つまり「仕事型仕事」は日本に実在する概念だ。
それはいい?としても、今までの「メンバーシップ型」とは何なのか。「ジョブ型」というのは、俺の勝手な思い込みかも知れないが、それ(職務を最初に決めて、それに基づいて働く)が多くの人が「自然に考える」形態なので、混乱の原因はこちらの「旧形態」にある。「ジョブ型」の説明にもよく、「旧形態の矛盾、限界」が露呈したので「ジョブ型」みたいな、本来は自然な形態なのに、一見奇妙な「型」が出てきてしまった、とか書いてある。今までとの整合性のためか、変なのを捻り出してきたという感じがする。
上記の通り「メンバーシップ」とは「会員」乃至「会員であることの地位」を示す。直ぐに思い浮かぶのは「ゴルフ場の会員権」とか、より身近だと「アマゾンプライムサービス」の「メンバーシップ」とか、「ジムの会員」とか、あるいは排他的な印象だが「X大学卒業生クラブ会員」みたいなのもあるかもしれない。とにかく、日本は以前これが雇用形態だったらしい。つまり俺も正規時代は会社の「会員」だったわけだ。
しかし、上記の例だと「会員権」というのは、普通はお金を出して「買う」対象だ。「会社会員権」は、貰うには新卒で「大喜利人間性面接」を突破する必要があるにしても、一旦与えられればあとは自動的に月々給料をもらえる等という会員権で、例外だ。だって「〜会員になると、逆に月々〜万円差し上げます」となったら、ネズミ講かもしれず警戒が必要だが、普通は会員希望者が殺到すると思う。
しかも正社員の会員権を持つと、安定した月給だけでなく、職務経験、社会的信用、社会保険・健康保険、有給休暇、等々の有形無形の福利厚生をも得られて、尚且つ(現在は形骸化しているにしても)終身雇用が一応保証され、そう簡単に会員権を剥奪されることはない。見返りとして平日1日数時間の拘束と、職務や勤務地等は会社側に制御される。多くの人に魅力的に映るのでは無いだろうか。その上で職務や勤務地も選ばせろというのは(そう言っている人がどれだけいるか知らないが)外部から見ると相当勝手な主張に見える。ましてやその会社の株主にはたまったものではない。どうだろうか。