レイオフについて考える。
今更だが、ビッグテック企業を中心とした大規模なレイオフがあり反応は様々だ。当然ながら立場によって見方が変わる。企業/経営陣/株主、従業員とその家族、それ以外の直接は無関係な他の人達等色々あるが、本日は時機もあるし、「求職中」と念仏を唱えていても一応生活していける程度の資産家の超富裕層を目指す俺の視点として、これを考える。
結論を先に言うと、経営目標の達成に必要と判断したのなら、合法的に大胆に素早く人員整理を決断すべきだ。つまりレイオフは合理的と考えるのが自然だ。健全な自由経済社会の発展にも貢献する。
合法的な人員整理自体に倫理的な善悪等は無く、仮にあっても誰にも裁定できない。整理が本当に必要かどうかも認定は困難だ。つまり経営陣の判断を受け入れ、将来の結果を見るのが精々だ。投資先企業はそうあってほしいという投資家目線だけでなく、その他全ての会社もそうするべきで、その方が社会全体が良くなりやすいと思う。各「反レイオフ」勢力毎に説明する。
外部の批判勢力
レイオフが横行すると必ず批判勢力が出てくる。整理された人達が感情的になるのはまだ分かるとしても、一般の批判路線記事や報道を読み聞きするのは時間の無駄だ。なぜならそれらは御宣託(良く言うと単なる「定性的分析」)が多いからだ。
第一に報道機関等はビジネスとして需要がありそうな情報を流しているだけで、レイオフ企業けしからんというのを読みたい人達が多いと考えている。第二にそういう批判勢力も、自分達がもっとよく経営できるかといえばその保証も無いし、そういう提案も理論も根拠も無い。多くは恐らく起業も出来ず、出来たとしてもその後軌道に乗せる事は難しいだろう。また凄腕経営者として雇われる能力や実績も無い。つまりは「御宣託」だ。
それでも何とかレイオフを避けるように「神経営」「人道的経営」すべきだ、と言うかもしれない。だが現実的にはそのような採用雇用を永続するのはほぼ不可能だ。なぜなら、まず未来の事はわからないので如何なる採用も終身保証はできない。そして「超絶妙人数」を常時見極め、そこへまた「絶妙人材」を常時探して採用するのが理論上可能だとしても、その選考に過大な経営資源が割かれて企業の存続が危うくなる。企業の目的は雇用の維持や従業員の永続生活保証ではないのだ。
企業としては、ある程度「大雑把」に「少し多め」に採用して、貢献が少ない(と大雑把に評価する)人材や部門を適宜見切る方が合理的だ。あるいは経済状況が加熱した時は需要を見込み大雑把に多めに囲い込んで、その後環境が急変し需要が激減したら調整した方が全体の生産性が高まると考えるのは経営上合理性がある。社会は企業を始めとする組織活動が合理的に行われた方が良い方向に向かっていく筈だ。
内部の整理対象者
しかし、それでは調整に使われる従業員が気の毒と思うかもしれない。だが考えてくれ。雇われる方は自由に転職できる。つまり会社の方から見れば「弊社を自分の職歴の部品の用に考えられている」とも言えるのだから、お互い様だ。雇用側だけ一方的に整理調整できないのでは経営負担が大きくなるのは自明、実際現在日本はそうなっている。そしてそのような人件費の圧力で経営が行き詰まると、結局困るのは従業員とその家族全員だ。誰得状態で社会が良くならない圧力になり得る。
冒頭で「整理された方が感情的になるのは分かる」と書いたが、気持ちは少し分かるけれども少なくともその一部は今まで会社に楯突かずに整理する側だったのかもしれないし、超富裕層を目指す視点としてもこれは已むを得ない、整理された人達も会社を非難しても非生産的だし早急に切り替えた方が合理的だ。
もちろん「人員整理」は過去に需要を見誤ったという経営の失敗で、レイオフ費用も計上しなきゃいけないし、経営陣には責任がある。しかし処分や更迭されるべきかは株主が決めることで報道機関等外部者の御宣託は必要ない。もっと言えば報道機関だって人員整理するのだから批判は二重規範とも言える。
関連して、若年層と中年層の対立で見ると、普通は人員整理は中堅社員も多く対象になりやすいから、新たな機会という点では雇用されやすい若年層に有利と考えられる。若年層も整理対象になるが、中年以上の従業員は家族や不動産で支出の多い故、相対して出直しづらく厳しい処置だ。つまり身も蓋もないが全体としては若年層優遇対策と言っても良い。
株主
さて、レイオフ企業の株主はどうか。あまり「株主がレイオフに反対する」という記事は見ない気がするが、そのような株主が居るとして考えてみる。一般の株主の印象としては株主は費用削減が好きで利益につながりそうだから喜ぶという感じもあるかもしれないが、俺はそれを度外視しても「株主がレイオフに反対する」のはそもそも非合理的だと思う。
なぜなら、経営陣を信用して選んでいるのは株主の総意で、ほぼ全権を委任してやらせる代わりに一定期間で結果が出なければ退出させられるという合意が自然だからだ。現経営陣を好まないという株主ももちろんいるが、そこは株主資本主義で民主的に決めているので文句は言えない。
数四半期先の結果で評価されるのに、その途中の経営判断に一々介入されていては会社運営は難しく、良い効果どころか下手をすると業績に悪影響がある。株主なのに業績低下に貢献するのは非合理的だ。やるなら介入せずに更迭して意に沿った新経営陣を選ぶしか無いがそこも株主の総意でなければならない。
株主としては一々レイオフに一喜一憂してもしょうがないのだ。経営判断が受け容れ難いが経営陣刷新も出来なそうならば株を売れば良い。
最近の状況だけを見ても、そもそも中期で見れば報道されているような企業でも従業員数は増加しており、冷酷人員削減コストカットで経営陣株主メシウマといった面はほとんど無いと思う。
超富裕層を目指す無職人間
最後に、反対勢力ではないが、俺自身を改めてどうか。ここまで述べた考えの通りだ。大雑把な印象だが著名な超々富裕層、超富裕層、大株主、等々は、怒られてしまうかもしれないが「大規模レイオフ程度では騒がない」のが原則と思われる。現に誰か騒ぎ立てているという報道もない。理由は既に書いたとおりだが、投資家としては対象企業について他にもっと重要な分析があるといった感じだろうか。俺個人としてはそのような分析能力も無いから天変地異とか企業が一気に傾くほどの大スキャンダルとかが無ければ、今回大レイオフをするビックテック企業を含め、投資対象は変わらない。どうだろうか。