無料放送について考える。
いよいよ、MLBの2023シーズンが始まった。
今年はシーズン開始直前に既に世界大会で少なくとも日本は野球で大盛りあがりなので、注目度が例年に比べて上がっていると思われる。
そして米国もそれなりに大きく話題になっているようだ。なぜなら、MLB.tvではコマーシャルで頻繁に大会の米国チームの名シーンが流れるし、俺の理解できる範囲だが現地解説でよく話題になっていると思う。
という事で、日本は例年にも増して、MLB視聴の需要が高まっているだろう。大谷翔平は当然ながら、ヌートバー、吉田、千賀、藤浪等、活躍が期待される。少し出遅れる様だがダルビッシュ、鈴木誠也、マエケンもいる。
ところで、俺は毎年「正規?のサービス」であるmlb.tvのサブスクで試合を視聴しているが、日本国内ではとあるネットテレビサービス(以降、「アロマ」と略)で234試合を「無料で」放送する。レギュラーシーズンは1チーム162試合、30球団だから試合数は2430試合、つまり大体10分の1を無料放送する。どれを放送するか全詳細は定かで無いが、当然日本人が注目する試合が中心となるだろう。
昨年もアロマはMLBの一部無料放送をやっていたし、ワールドカップに至っては全試合無料放送だった。
利益の極大化を目指すはずの「上場株式会社」だから、当然「慈善事業」ではなく長期視点の損得で考え、また大株主で事実上の全権者である人の決定であるから、サービス提供側の是非は(本当は)文句を言う筋合いではない。多くの視聴者が無料を喜んでいるだろう。
だが、こんな事を書くと読者も不愉快かもしれないが、無料放送に群がる日本人は、その「ケチ臭さ」というか「卑しさ」が露呈していると、どうしても感じてしまう。
長年の無料信奉、低価格原理主義、等々のデフレ病?が全然払拭されず、とにかく何でもかんでも安い方が良い、出来ればタダが望みだ、倹約が常に良策、支出はとにかく絞るといった「縮小思考」に陥っていないか?と俺は複雑な感情を持ってしまうのだ。
それとも俺の思い過ごしだろうか。
日本は様々なモノやサービスの価格が依然として国際相対的に低く、それに応じて報酬も低いままになっていて、経済に悪影響があるとされている。
限られた試合数であっても、とにかく「無料」放送を喜ぶような「縮小思考」は、その悪影響の一因じゃないだろうか。あるいは原因は他にあってそれにより起こるやむを得ない現象なんだろうか。わからない。
アロマは多くのチャンネルで無料番組を放送しており、俺も時々視聴、重用しているが、それは基本「他の視聴方法が無い」からで、そういう意味で当該サービスの番組制作能力は素晴らしい。「ライブ中継」を各興行主体が独自にやるよりは、インフラも揃っていて視聴者へアクセスが断然多いアロマに一元化するのは合理的だ。
昨年のワールドカップも放映権を得たのはアロマと各放送局で、国内では他の方法が実質的に無いから、最近はテレビが無い人も多いし、好む好まざるに関わらず、アロマ無料放送以外の選択肢が無かった。
しかし、MLB試合中継は総本山自体が、ネット中継に非常に力を入れており、正直アロマの放送より格段に優れたサービスとなっている。
当然全試合ライブでやるし、もちろんその場で過去のイニングに戻ったりできるし、様々なデータも同時に確認できるし、実況も当たり前だが全てその場で(アロマは一部映像を見ながらやっていると思われるが確証は無い)やる。しかも出演は筋金入りの専門家で内容も時々「MLB専門家」が解説する日本の実況とは段違いだ。
しかも、今年はシーズン直前になってこれだけ野球が注目され、盛り上げた当事者であるスーパースター達の多くがMLBのレギュラーシーズンでまた各チームに分かれて戦う。
長年「縮小思考」に毒されている日本でも、たとえ有料でも視聴したいという需要は充分にあると推定する。実際、報道番組等で毎日、詳細に試合の結果を放送している。
しかも年間全試合定額購入でもそんなに超高額というわけじゃない。逆に言うと、例え「大谷の出場試合」であっても、お金を払ってまで見たくないという野球ファンは、一体何にお金を使うのだろうか。
もちろん人それぞれであるから、需要の優先度は各人違う。野球も好きだが無料なら観るけど、相撲だったら幾らでも払うとか、映画の方がもっと好きとか、あるいは生活費用でカツカツでどんな娯楽にもカネを払う余裕がないとか、色々あるだろう。
しかし野球ファン総体でいえば、相当な人気、需要があるのは確かだ。
アロマの様な企業戦略は当該社にとっては良いのかもしれないが、他に放映するサービスが無いならともかく、日本全体ではケチ思考が「余計に」「より大勢に」染み付くだけだ。
無料放送は「貢献度」より「害悪度」が遥かに大きい状況になっている。皆お金を出して観たい試合を自由に視聴するべきだ。大谷の試合だけでもその価値が充分ある。どうだろうか。